『意識高い系資本主義が 民主主義を滅ぼす』を読みました。この本もその後の状況でかなり変わってしまっている。まず、意識高い系資本主義はWOKE CAPITALISMというよりも、FIERCE CAPITALISMになっている。言うまでも啼く、第二次トランプ政権が多様性を敵視したむき出しの金権主義を打ち出しているためだ。
TINSEL CAPITALISMはFIERCE CAPITALISMになり果てた。多様性という文字ごと歴史を書き換えるかのように抹殺し始めた、第二次トランプ政権は完全に制御不能になっている。特に日本は多様性において、かなり諸外国の後塵を拝しているため、多様性を否定するのは危険極まる。
結局、「意識高い系」資本主義はただの新自由主義であったため、第二次トランプ政権と共に「獰猛な」金権主義に変貌した。テクノオリガルヒは論理も理性もかなぐり捨てて、ただ、忖度に励む状態だ。米国では司法が機能停止し死法に見える。
このような無残な状態に陥るとは誰も思っていなかったはずだ。新自由主義のまま、ただ、獰猛さをましただけ。WOKEという仮面すらかなぐり捨てた。従って、この本は表層ではなくその内部を読み解く必要がある。なぜなら、WOKEという言葉はその内実を喪失し、ただ、相手を罵るための言葉と化したからだ。
つまり、WOKEという言葉は日本で自称 保守層が用いるサヨクと同じで、ただ、相手を侮辱するための言葉になり果てた。しかも、多くの場合、中身すら見ていない。同じ言葉でも綴る者が違うだけで、違う論評が出てくる。これは、言葉がただ相手を侮辱するための棍棒となり果てたことを意味する。
『新しい封建制がやってくる』を読みました。本書で特に大事なのは冒頭に挿入された日本語版解説であるかと思います。特に「新しい封建制」の最先端は「シリコンバレー」だったは特に重要です。ビル・ゲイツは、シリコンバレーの右傾化と、SNS上の偽情報・憎悪言説の増加の2点は想定外だったと語るように、シリコンバレー特にテクノオリガルヒの右傾化は重要です。「社会と協調する倫理的な資本主義」という考え方を受け入れることができず、ただ、フリードマン的に利益に邁進する様は悲惨です。フリードマンの「自由主義者は無政府主義者ではない」をすら没却しているかのようです。
実際、この本が書いている以上に、状態は悪化しているかと思います。この本の時点では寡頭支配者の多くは、進歩主義者と手を組んでいるですが、現状のイーロン・マスクやマーク・アンドリーセンは進歩主義から完全に外れ、フリードマンの「自由主義者は無政府主義者ではない」をすら没却し剝き出しの資本主義と加速主義、長期主義の権化の保守主義となり果てています。
例えば、イーロン・マスクなどは最たるものでしょう、トランプ政権の元でアメリカ国際開発局の解体を進めていることなど、もはや、合理主義ですかと問いたくなります。「左翼組織への資金洗浄」「海外メディアの報道操作」といった主張がイーロン・マスクやドナルド・トランプ元大統領によって拡散されています。これは、そもそも、イーロン・マスクのイーロン・マスクがXで「USAIDは左翼組織への税金のマネーロンダリング装置だ」と断言した投稿に賛同したところから始まっています。
その意味では、この本は既に、現状の状態から逸脱し始めています。その意味ではより新しい状況に即している、日本語版解説は重要です。ここで今の問題を説明するために『シリコンバレーのIT長者が信奉する「TESCREAL(テスクリアル)」の正体…それはもはや「SF脳」の産物だ』をひいてきます。TESCREALとは以下のものの総称であり略です。
Transhumanism:トランスヒューマニズム
Extropianism:エクストロピアニズム
Singularitarianis:シンギュラリタリアニズム
Cosmism:コスミズム/宇宙主義
Rationalism:合理主義
Effective Altruism:効果的利他主義
Longtermism:ロングターミズム/長期主義
特に、この場合の「長期主義」気候変動などを考える長期的思考とは全くの別物です。1億年先とかを考えてしまうので気候変動などどうでもいいことになってしまうのです。そして、これと目先の重化学工業とかを重視する姿勢が結合した結果、気候変動などどうでもいい利益さえ得られればという剥き出しの資本主義に陥ります。
この本は今を考えると、少し古びつつはありますが、依然として有益です。ただし、今を見つめるには勉強を更に進め、更に考え続けることが重要であると考えました。